業務のAI化 / 実践ガイド
月次報告にAIを使う時、数字と説明を分ける理由
月次報告の下書きにAIを使うなら、数値から確認できる変化と、その理由の説明を分けて用意します。差があることは計算できても、なぜ差が生じたかは数値だけでは確定できません。
この記事では、小さな架空の表から説明文を作り、元の表と照合する方法を紹介します。実在する組織の業績や、財務判断の助言を扱うものではありません。
集計期間・単位・項目をそろえる
最初に、対象期間、単位、集計範囲を記します。月間と累計、件数と金額、税込と税抜などが混ざっていないかを確認してください。名称が同じ項目でも、計上条件が違う場合は、そのまま比較できません。
AIへ渡すのは、数値の表に加え、その条件を説明した短いメモです。条件が分からない数値を、もっともらしい説明で埋めないようにします。空欄が「未入力」なのか「ゼロ」なのかも分けてください。
数字の変化と、その理由を分ける
次は説明用の架空データです。単位は件、期間はある1か月、集計範囲は同じとします。
| 項目 | 目標 | 実績 |
|---|---|---|
| 作成した報告書 | 20 | 18 |
| 完了した確認 | 10 | 12 |
「実績−目標」を差と定義すると、報告書は−2件、確認は+2件です。目標に対する実績の割合を計算すると、報告書は90%、確認は120%となります。
この表だけでは、報告書が少なかった理由も、確認が増えた理由も分かりません。「担当者の不足で遅れた」「確認の効率が上がった」といった説明は、別の根拠が必要です。正しく計算できたことと、理由が確定したことを分けます。
確認済み・仮説・未確認で書き分ける
この例から作る最小の説明文は、次の形です。
報告書の作成は18件で、目標20件に対して2件少ない結果です。確認の完了は12件で、目標10件に対して2件多くなっています。各差の理由は、この表だけでは確認できていません。
仮に、別の確認済み資料に「対象の報告書のうち2件は翌月へ延期」とあれば、その条件を添えて説明できます。ただし、今回の表と同じ範囲を扱っているかの照合が必要です。本稿の元表には、その資料は含まれていません。
仮説を書く場合は「可能性がある」とするだけでなく、何を確認すれば判断できるかを添えます。「延期の有無を進捗表で確認する」など、確認する対象まで残す形です。
元の表と文章を照合する
照合では、件数、符号、割合、単位、対象期間を一つずつ確認します。増減の向きだけを見ず、何を基準に計算したかも確かめてください。
割合は、分母がゼロの場合に同じ計算ができません。実際の表で該当する場合は、組織の表示ルールに従って扱い、AIへ適当な割合を補わせないようにします。四捨五入の条件も、文章と表で合わせてください。
「目標比」と「前月比」は違う比較です。この例には前月のデータがないため、前月より増えた・減ったという説明は作れません。作成件数と確認件数を合計して、一つの達成率とすることも、集計の意味が決まっていなければ避けます。
依頼する文章の範囲を絞る
AIへは「表から読み取れる件数と目標との差だけを書き、原因や対策は追加しない」と頼む形から試せます。元の表にない情報を質問として返す欄も必要です。
文章を直すときは、読みやすくする修正と、数値や理由の修正を区別します。前者のために条件を削ると、集計の意味が変わることがあります。短くした文章でも、期間と単位を確認できる形にしてください。
未確認の理由と、次の確認を報告へ残す
確認できていない理由は、報告から消さず、確認する対象と一緒に記します。「理由:未確認/確認する資料:作成予定と完了記録/確認先:業務の担当者」のように、次の行動へつながる形です。
報告を提出する前に、確認済みの説明と未確認の説明が同じ断定調になっていないかを見ます。AIが補った原因、対策、評価があれば、根拠を確認して残すか、質問へ戻してください。
数値の集計、文章の下書き、原資料との照合を別の工程として置くと、どこを人が確認するかを決められます。まずは扱ってよい小さな表一つで、期間・単位・差の定義を書き、確認済みの事実だけで三行の説明を作ってみてください。
どこまでを自動化するかは、照合できる範囲から決める
元表の集計、説明の下書き、確認済み情報の反映、報告の共有は別の工程です。集計条件が固定されている箇所は、表計算の式や既存の処理を使う選択肢もあります。
| 工程 | AIを使う前に決めること |
|---|---|
| 集計 | 対象期間、単位、範囲、計算式、丸め方 |
| 説明 | 元表から言えることと、別資料で確認する理由 |
| 照合 | 件数・符号・割合・説明の根拠を見る人 |
| 共有 | 確認済みの版と、未確認事項の扱い |
AIが出した文章を元の数値へ戻って確認できることが、試す範囲を決める条件です。原資料が不足している場合は、文章の長さを増やすより、集計条件や確認先を整えます。
よくある確認:説明が足りないときは?
原因を想像して書き足す前に、どの資料を見れば確認できるかを決めてください。確認が間に合わない場合は、理由が未確認であることと次の確認を報告へ残します。